■7万円の工事が「65万円」、水回り修理で高額請求トラブル相次ぐ 記事詳細  
 
  トイレや台所など水回りの故障を修理した際、業者から数十万円以上の高額な費用を請求されるトラブルが全国で相次いでいる。「保険が使える」などと言って強引に支払わせるケースもあり、被害者は「巧妙な手口で相手のペースに巻き込まれてしまった」と語る。愛知県ではトラブル急増を受け、弁護士有志が対策弁護団を結成。注意を呼びかけるとともに、損害賠償を求める訴訟の準備を進めている。(野崎達也)

■■見積書見せず作業

 「床に水があふれるなか混乱し、請求が高額でも断ることができなかった」

 愛知県内の50歳代女性は読売新聞の取材に応じ、そう振り返った。女性は8月中旬、洗濯機の排水管付近で漏水が起きたためインターネットで修理業者を検索し、上位に表示された修理業者の紹介サイトを利用。サイトには「出張・見積もり無料」「明確な金額を提示、追加料金一切なし」などと記載されていた。

 ところが、訪れた同県豊橋市の業者2人に見積書を見せるよう求めても「今、作ってます」などと言って具体的な説明はないまま、業者はいきなり床板を切断し、排水管の交換などの作業を始めたという。終了後、見せられた工事請負契約書には約65万円の請求額が記載され、女性は「血の気が引いた」。

 業者は「クレジットカード払いなら、料金は80万円を超える」「料金は火災保険で返ってくる」などとまくし立て、現金払いを促した。女性は家の修繕用にためていたタンス預金を全て支払いに充てたという。

 後日、女性が別の業者に問い合わせると、同種の工事は多く見積もっても7万円程度と判明。保険会社への問い合わせでは、排水管工事なら契約している保険の適用が難しいこともわかった。修理業者やサイトの運営会社に電話しても、「見積書がなくても工事はできる」などとして返金には応じてくれなかった。

 この修理業者は取材に応じず、サイト運営会社は取材に「ノーコメント」とだけ回答した。国民生活センターは「保険適用は業者が判断することではない。作業内容や料金に納得できない場合は、その場での支払いを断ってほしい」と呼びかけている。

 同センターによると、全国の消費生活センターなどに寄せられたトラブル相談のうち、トイレの修理関連は2013年度の550件から19年度は1157件と倍増。その他の水回りについても、13年度の398件が19年度には1・4倍の559件に増えている。

■■年内にも集団訴訟

 愛知県周辺でも被害が相次いでいることから、同県内の弁護士らが「悪質!『トイレのつまり』ぼったくり被害対策弁護団」を結成。弁護団によると、この女性と同じサイトで、「基本料金780円から」とあったにもかかわらず、相場を大きく上回る数十万円以上を請求されたケースが続発。8月以降、愛知、岐阜県の男女約50人から相談が寄せられ、最大で155万円を支払わされた事例もあった。

 団長の石川真司弁護士は「消費者の窮状につけ込んで暴利をむさぼることは許せない。困ったら相談を」と呼びかけている。弁護団は年内にも、業者側に損害賠償を求める集団訴訟を名古屋地裁に起こす方針だという。


読売新聞(オンライン)より
 

 
 
2020年10月11日